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文/佐藤朋子
雨女と旅の相性
●南の島は雨女と行くべからず

 旅をしようと思う時、いろんな要素があるものの、まず気になるのはシンプルに天気のことだろう。晴れたらいいな、と思うのが大半で、「やっぱり旅は雨が降ってなくちゃ」なんていうのは少ないと思う。
 あなたと旅先での天気との相性はいかがですか?

 私の周りには、確率98%の晴れ男、逆に確率95%の雨男、そして、どしゃ降り女、というのが居る。
 彼らが一緒に出掛けるとどうなるか……というと、不思議な事に、その力の強弱があるのだ。晴れ男と雨男では、晴れが勝ち。晴れ男とどしゃ降り女では、必ず雨。という具合に、組み合わせによっても変わってくる。かくいう私は、「雨のち曇り、ときどき晴れ」女である。非常に中途半端だ。

 旅先での雨の記憶。
 一番最悪だったのが、数年前のサイパン旅行だ。初めて勤めた会社での、初めてのゴールデンウィーク。同期の友人6人とともに出掛けた。
 夜中、サイパン空港に着き、ホテルに直行した。その時点では、雨は降っていなかった。その後、一つの部屋に全員が集まってビデオ撮影などで盛り上がっていたところ、窓の外で不穏な音が響き始めた。
 風がひゅうひゅうと鳴り、椰子の木が大きく揺れている。
 窓に打ち付ける激しい雨の音。
「気、気のせいだよね」
「そう、気のせい。気のせい」
 なんてごまかしていたものの、一夜明けても嵐はおさまっていなかった。

 南の島でホテルに閉じこめられるほど退屈なものはない。
 なんとか雨足が弱まった次の日、私達は強引にビーチに出てみた。せっかくの休み。新調した水着も泣いているではないか。
 ところが、寒いのである。
 ほんの少し海に入っただけで、身体はがたがた震え、あっという間に唇が青ざめた。当時の写真が今も残っているけれど、本当に笑える。南の島に来て、皆、顔は真っ白、唇は真っ青で、タオルに包まれて、ひきつった笑顔で笑っているのだ。

   さて、お約束のように、私達がサイパンを離れるその日、しかも空港に着いたとたん、天気は回復。空港から見たサイパンの空は、からりと綺麗に晴れていた。
 今はばらばらになってしまった、あのメンバーの内、いったい誰が雨女、いや嵐女だったのだろう。それとも、組み合わせが悪かったのか……、それは今も謎である。
 そして、こんなに最悪だった旅は他にはない。

●スーツケースの鍵はなくすべからず

 中学の頃からずっと仲の良い友人がいる。中学、高校、短大と同じ学校で、今となっては幼なじみと言ってもいいかと思うほど、お互いをよく知り尽くしている。
 一緒に出掛けたり、旅行をしたことももちろん何度もある。
 しかし、である。
 彼女と私の他に、第三者が居る場合は問題ないのだが、二人きりで行動すると、必ずと言っていいほど何かトラブルが起きるのである。

 例えば、二人でどこかに出掛けようとする。電車に乗る。気が付くと、逆方向に向かっている。間違った駅で降りる。なかなか目的地に着かない。
 図書館に行こうとする。着くと、臨時休館だったりする。
 映画館に行こうとする。つぶれていたりする。
 つまり、二人とも、たんに注意力散漫で間抜けなだけだったりするのだが……。
 私一人でも、例えば数年前、幕張メッセに行こうとして、気が付いたら松戸に行ってしまったという経験もあるが(その時待ち合わせしていた、みどりさんもビックリ!)、友人は学生時代、何度も電車の中の吊り棚に学生鞄を置き忘れてきたくらいの強者なので、多分私以上だと思う。

 そんな二人が一緒に出掛けた、数年前のヨーロッパ旅行(なんて無謀なことを……)。これこそ珍道中といっていいだろう。
 まず旅のスタートの成田空港から、それは始まっていたのだ。

   予約していたパリのセーヌ川クルーズのチケットを、彼女が忘れて来た。
 巨大なスーツケースの赤外線チェックで、アヤシイものが映って、係員に怪しまれた。それはロンドンにいる知人に頼まれた「黒酢」の大瓶だったのだが。
 ロンドンに着いてすぐ、迎えに来てくれた知人に劇場に連れていかれ(いや、頼んでおいたんだけど……)、「オペラ座の怪人」を観たが、二人ともグースカ寝てしまった。
 別の知人が、非常に入手困難だった、100年に一人のプリマと賞されるシルヴィ・ギエムの舞台チケットを取ってくれたのだが、舞台前3列目は1枚しかなかった。もう一枚はかなり後ろの方だった。その為、幕間の度に、私と彼女は広い劇場を走って席を交替して観ることになった。ちなみに、その舞台、熊川哲也も出演していた。
 また、ドイツでは滞在中、何かの休日でほとんどのお店が閉まっていた。

 最大のクライマックスは、ドイツでの「スーツケースの鍵紛失事件」だ。
 彼女が、スーツケースの鍵をなくしてしまったのだ。まだ旅は半分残っている。スーツケースが開けられないと、不便極まりないではないか。私達は必死になって、道端や洋服のすべてのポケット、鞄の中身も全部ぶちまけて探しに探した。が、結局、鍵は見つからなかった。

   で、彼女はどうしたか?
 頑丈なサムソナイトの鍵を、私が持っていたヘアピン1本を使い、2時間ほどかけて開けることに成功したのだった。
 信じられなかった。
 彼女は、もうどんな鍵でもヘアピンで開けられると豪語していた……(っていうか、なくすなよ)。
 こんなんでいいの、サムソナイト? 

 もちろんこの話にもオチがつく。
 日本への帰国途中の飛行機の中。彼女がずっと持っていた手提げ鞄の中から、あの鍵がひょっこりと出てきたのだ。
 ひっくり返して探したはずなのに……。
 いったいどこに隠れていたのかしら?
 それともやっぱり、私達が間抜けなだけだったのか……。

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