『ローリング・ストーンズの来日公演を見て、考えたこと』

文章/石野みどり
 ーリング・ストーンズの来日公演に行ってきた。 3月10日の日本武道館公演を初めに、横浜アリーナ、東京ドーム2日間と合計4回 も足を運んだ。その翌日は、赤坂ブリッツで行われたアルフィーの高見沢氏のソロラ イブを取材して、今わたしの中では果てしなくロック度が高い。こんなことは本当に 久しぶりで、とてもクリアな空気がわたしの周りを覆っているような感覚がある。周 りにある何気ない日常の風景が、特別なもののように思えるなんて10代の頃のようだ。
 この感覚は、今、世界中の多くの人達が共有しているであろう、戦争という哀しみ の感情と決して無関係ではないだろう。だからこそ今、わたしにはロックが必要なの だという気がする。
 高見沢氏のライブ取材原稿は、近いうちに【I'M HERE.】にアップするので興味の ある方はご覧いただきたいと思うのだが、今回はローリング・ストーンズのライブの ことを記そう。
 【I'M HERE.】内にある『Rolling Stones BBS』でもみんなが書き込んでいること だが、結成40周年を記念した今回のローリング・ストーンズのライブは、今まででい ちばん素晴らしかった。わたしは5年前の東京ドームは10日間足を運んだし、その前 の来日はまだ実家に住んでいたので浜松からわざわざバスで東京ドームに通った。ミッ ク・ジャガーのソロの大阪公演も見ているが、今回の感動は今までに味わったことの ない衝撃だった。
 ひとことで言えば、人間ってあんな風になれるんだ、というわたしにとってのある べき理想の姿を目の当たりにした、ということだろうか。
 メンバー全員ほぼ60歳近く、エネルギッシュに、そしてやりたい音楽を心の底から 楽しんでいるように見えた。ドラッグで命を落としかねなかったと雑誌で語っていた キース・リチャーズはとても元気だったし(意外と体が柔らかいのね!)、今回のツ アーのために、アルコール中毒の病院に入所してまでアルコールを絶ったというロン・ ウッドもチャーミングだった。最年長のドラマーであるチャーリーはいつもと変わら ずクールだし、華やかな世界にいながら流されず、変わらないままでいるということ も特別なことのような気がする。
 そして、わたしが“心の恋人!”と勝手に呼んでいる(こんな女性が世界中にゴロ ゴロいるんだよ、と突っ込まないでね)、ミック・ジャガーに至っては、もう惚れ惚 れするほどお腹の筋肉がセクシーで……って、日本武道館の帰り道、大きな声で「ミッ クのお膝の上に乗ってビールついであげたーい」と言ったのはわたしではないけれど、 最初に「ミックにストロベリー・ショートケーキをお口に運んでアーンしてあげたー い」と言ったのはわたしである。みんなに聞かれちゃったのね、反省。
 オフ会やあちこちでわたしがあまり騒ぐので、tomokoさんと二人で“腹筋姉妹”な どと呼ばれる有り様なのだが、「実は私もあのミックのセクシーな二の腕にうっとり してました(笑)」と、こっそりオフ会やメールで告白してくれる女性も少なくない のである。ローリング・ストーンズというバンドのフロントに立ち、あらゆる人を魅 了し続ける59歳のパフォーマー。それが現在のミック・ジャガーだ。

●目に見えてわかりやすい結果論と日々のあり方、積み重ね

 わたしが腹筋、腹筋と騒いでいたのにはワケがある。今年になって習いはじめたヨ ガの先生の影響だ。彼女は62歳で4人の子供を育てあげたのだが、周りが圧倒される ほどエネルギッシュで、そしてバツグンのプロポーションなのである。40年かけて築 きあげた独特の哲学を実践している女性で、とても魅力的な人だ。
 わたしはここ最近彼女を通して、人が周りに与える影響力や、種族としての人間が 人間を『魅せる力』とはどういったものなのだろう、と考え続けていたのだった。そ の際の重要なテーマが、人間にとってあらゆることが絶対と言い切れないなかで唯一 「絶対」と言いきれるものは、「生、老、病、死」であるということだ。
 つまり、「今わたしは生きている」がいつか必ず「老い」、そして「病」にかかっ て「死んでいく」。これだけは生物として、避けることはできない。
 この現実は頭のなかでわかってはいても、毎日「死ぬこと」と向き合っていたら頭 がおかしくなるくらいに怖いことだから、普段は意識しないようにしているだけのこ とだ。できることなら抗いたい。無意識の部分が、人を老いることと、病にかかるこ とから遠ざけようと、いつまでも若々しく健康でありたい、と対極のことを思わせる のだ。
 魅力的な人間であること。ヨガを通して彼女のこだわりを見ているうちに、そんな 思いに辿りついたわたしが学びたいと思ったのが、日々の心のあり方と積み重ね、そ してその努力の果てに手に入れられる筋肉なのである。
 筋肉はあくまでも目に見えてわかりやすい結果論でしかないが、この、日々いかに あるか、が最近のわたしの最大の関心事になった。
 女性ならば魅力的なプロポーションをいつまでも保ちたいと願うし、ツヤツヤの肌 や外見の美もほしい。けれど、努力を続けていても少しずつ確実に「老い」へと向かっ ている。しかし! 60歳をすぎても鍛えていれば筋肉は得られるし、健康も手にいれ られるのだと彼女の姿に来るべき理想の姿を重ねていたのだった。
 そこにきて、あのミックのセクシーな二の腕を見てしまった。4日間のライブをこ なし、アンコールのJumpin' Jack Flashで東京ドームを右端から左端へいっきに軽や かに駆け抜けていく彼の姿は、まだまだイケるぜ!という姿をアピールしているよう で、本当に感動的だった。
 ミックのロックンロールに関する姿勢は、20年以上前の雑誌のインタビューからみ ても、揺るぎないことがわかる。それは、この言葉にすべてが現れているだろう。
「最初から、ロックンロールをやってても、はっきりしてることがあった。パフォー マーになりたかったら、健康でシェイプアップしなきゃってことさ」
 ミックはローリング・ストーンズのミック・ジャガーであり続けるために、この哲 学をもう40年も実践し続けている。キースもロニーもチャーリーも、ローリング・ス トーンズのメンバーであり続けるために、彼らなりのやり方を行っている。
 こだわり続けるロックの意志こそがわたしを熱くさせ、10代の頃へと誘うのだ。  人間という生き物がもつエネルギーの力を、まざまざと魅せつけられたローリング・ ストーンズの来日公演であった。
 人間という生き物は素晴らしい。戦争が始まった夜、世界のなかの日本という小さ な国の大阪でローリング・ストーンズがライブを行ったことは、きっと必然なのだろ う。人間がもつエネルギーの力はとてつもなく大きい。だからこそ、誤った使い方や 間違った方向性に向かったときにも、瞬時には止められなかったのだろうと思う。
 しかし、である。わたしは自分のなかにあるエネルギーを、一日も早く終戦に向か うための祈りに捧げたい。微々たるものかもしれないが、人間が持つ目には見えない エネルギーもまとまれば、やがては大きなうねりになると信じているのだ。
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