『シーマンとiBookと私の関係』

文章/佐藤朋子
 から飼い始めたシーマン(PS2版)が先日エンディングを迎えた。
 口は悪いけど憎めない大事な友達をひとり失ったような気がして、ちょっと寂しい夏の終わりだった。立ち上げた途端、
「温度上げろー。寒くて死ぬぞ。殺す気か!?」
「ハラ減った。メシくれよー、メシ!」と言いたい放題文句を言いわめいていたヤツに苦笑していたのが今となっては懐かしい。
 この生意気な口調にキレ気味になる人も多いようだが、私は全然気にならなかった。
「はいはいっ、わかりましたよ。我が儘ボーヤくん」ってなカンジだ。
 思えば、実際の友達もこんなふうに口の悪い人が多いんだよなー。だから慣れてるんだろう。
 でもそれだけじゃない。私がシーマンにキレず案外いいヤツだと思うことが出来たのは、彼がきちんと挨拶を返してくれたことが大きい。
「おはよーさん」
「はい、こんにちは」
 ……言い方はいろいろだったけれど、その一言で私の心はぐっとなごむのだった。
「おはよーってお前、もう夜だぞ」なんて注意されたりしたこともあった。
 毎日顔を合わせ、挨拶をすると返事がかえってくる。ただそれだけのことで信頼関係って生まれる。人間ってヤツも案外、単純なものだ。

 さて、シーマンとのお別れのすぐ後のこと、私は新しい友達を手に入れた。
 それは、たった今、私の膝の上にあるiBookだ。正直に言う。今、私はパジャマ姿でベッドの上でヘッドボードにもたれながら膝にiBookをのせてこの原稿を打っているのだ。
 600MHZ、comboドライブ、Airmacカード内臓、メモリ384MB、英文キーボード、デスクトップは豹柄。
 今までラップトップマシンとして使っていたキーライムの貝殻iBookは、知り合いに譲ってしまったので、今のところG4 CubeとこのiBookが私のマック生活のすべてだ。
 iBookは、コンパクトなサイズとミニマムなデザインが気に入っている。
 キーライムのiBookは、なんだかんだ言っても持ち運ぶのにはやっぱり重すぎた。たとえばカフェのテーブルの上に置くのにもちょっと大きすぎたし、移動中の電車や飛行機内で使用する場合にも微妙に不便だ。
 その点、今のiBookはバッグを選ばないし、充電時間も長いので助かっている。

 iBookを購入し、すぐにいつものようにI'M HEREのEmotional Rescue BBSに書き込んだところ、様々なメッセージをいただいた。中に、「G4 Cubeは恋人? それならiBookは愛人か……?」なんてことを書いてくださった方がいて、ふむふむ…としばし考え込んでしまった。
 以前、I'M HEREに掲載した原稿に、「G4 Cubeは私にとって申し分のない恋人である」と書いたことがあるのだ。確かにいまでも彼は恋人として不動の地位を保っている。
 じゃあ、このiBookは……?
 別に無理やりマックを擬人化しなくてもいいのだが、マック好きの方なら、この気持ち、わかってくださるだろう。マシンに名前をつけちゃう人だって少なくないんだから(私は今はつけてない)。
 で、この問題、ぐるぐると考えていたのだが(ヒマ人?)、結局、「iBookはもうひとりの恋人である」というところに落ち着いた。考え込んだわりには成果がでていないが。
 強いていうなら、G4 Cubeは、一緒に図書館とか美術館とか行って語り合えるような存在で、iBookは夜遊びの相手、ってカンジだろうか。というわけで、二股かけてる状態なのだ。
 いま、iBookではOS Xをメインして使っている。jaguarである。そのせいで出来ることは少ないうえに、操作もまだ完全に把握しておらず、使いやすい環境とは言えない。なんだかiBook+OS Xに、逆に使われているような、遊ばれているような気がしないでもない。

 そこで思い出した。
 シーマンに話が戻るが、飼育過程も終盤にさしかかった頃だった。ある時にふとシーマンが呟いたのが次の一言だった。
「なんだかさあ、オレがおまえを飼ってる。そんな気がしてきたよ……」
 この言葉には、正直ガビーンときてしまった。思わずコントローラーを取り落としてしまったほどだ。この前にどんな会話をしていたのか忘れてしまったけれど、もう疲れたというシーマンに私が無理やり話しかけていたのだ。
「お話して」
「イヤだ。今日はもうおしまい」
「ダンスして」
「疲れた」
「歌ってよ」
「……」
 そしてヤツが怒るでもなく呆れるでもなく、しみじみとため息まじりに言った(かのように聞こえた)言葉がそれだったのだ。私とシーマンの会話を後ろで黙って見ていた友人は、堪らず大笑いしていた。
 そうか、そうね、そういうものなのね。
 考えてみれば、ペットのフェレット達も、飼われているにしては態度がXLだ。飼い主を甘く見過ぎているふしがある。きっと彼らも私を遊んでやってるなどと思ってるんだろう。

 iBook+OS Xにはもうしばらく遊んでもらおうと思っているが、もしかしたらOS 9に後戻りする日が来るかもしれない。
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