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文/堀本真理美

【VANESSA PARADIS / Be My Baby】
Vanessa Paradis (収録アルバム:Vanessa Paradis)(c)1992 Polydor

 「夢見るジョー(Joe le Taxi)」でデビューした時、ヴァネッサはわずか14才。 その彼女の可愛さといったら、フランスかぶれのオリーヴ少女の憧れでした。しかし 驚くなかれ! そんな彼女も今年の誕生日が来れば30才です……あぁ、月日の流れる のは早い。ここ最近は女優として大活躍の彼女、コケティッシュな魅力だけでなく妖 艶さすら漂わせていて女性から見ても本当に素敵だと思います。
 この曲はヴァネッサ・パラディにとって世界的成功への出世作となったサード・ア ルバムに収録されています。初めて全曲英語で歌ったアルバムということで、3枚目 にしてセルフタイトルをつけたのでしょう(日本では「ビー・マイ・ベイビー」)。 スマッシュヒットになった「ビー・マイ・ベイビー」は、ポップでスウィートなほん とうに可愛らしい曲、たしかCFなどで使われたことがあるはずです。
 プロデュースは当時の恋人だったレニー・クラヴィッツ! ファンクロック界の新 生とフレンチロリータのカップルは、個人的にはちょっと“美女と野獣”的な印象も ありました。が、レニーは彼女のためにプロデュースだけでなく、楽曲提供からレコ ーディングミュージシャンまでこなしていて、こんなラヴソングも二人の関係から自 然に生まれて来たのですよね、きっと。若くて可愛らしいフランス人の女の子、ヴァ ネッサは、決して悪い意味ではなく、私生活も含めて「丸ごとプロデュース」されて いたと言えるのかも。
 とはいうものの、こういう歌詞の曲を作ったのがレニーだということを考えると恋 人に対する「想い」が大きかったのはレニーのほうかもしれません。だって、こんな に小悪魔的に愛らしい女の子と付き合っていたら心配で仕方がないでしょうから。
 思うに、恋愛関係というのは二人の想いが同等というよりは、お互いの想いが“等 号付き不等号(≦、≧)”であることで成り立っているのではないかな?
 逃げれば追いたくなる、押すのがダメなら引いてみる、というような駆け引きがあ るように──。
 そして、二人の想いが“イコール=”になったときに「結婚」があるのかもしれな いし、“不等号<、 >”だけになったときに「別れ」があるのかもね。
 恋をすると、人は浮かれもするけれどヘコみもします。好きというイコールの部分 は変わらないけれど、そんな気持ちの変化で上に乗ってる<、 >の向きが変わるの 。何かあるたびに一喜一憂、なんだかんだと言つつも、女は懲りずに恋をするのです ♪
(以下、歌詞抜粋)

Love is just like a flower baby it has to grow
(愛ってちょうど花みたいなものよベイビー、育てなくちゃ)
And when you are away I'm even loving you more
(あなたがいないと、なおいっそう恋しい)
I just have to let you know
(どうしても教えてあげなきゃ)
One on one is the way and that's the way it should be
(1対1ってのがスジでしょう、そう在るべきだわ)
So if you're not gonna stay
(だから、そのつもりがないなら)
Then don't be playing with me
(私をもてあそばないで)
You can set me free
(自由にしてちょうだい)

All I'm asking you for when you walk out the door
(私が望んでいるのは ドアの外へ出たら)
Is to be my baby, baby
(私の恋人になって、ってことだけよ)
'Cause all this love is for you
(だってこの愛のすべてはあなたのため)
And you know that I'm true
(ねえ、嘘じゃないってわかるでしょう)
And I'll be your baby
(そして私はあなたの恋人になるの)

 まず“baby”という単語、過去に『恋の音楽室』で紹介した曲でも何度も登場して いますが、日常的な日本語にはない表現です。こういう親愛の情がこもっている「呼 び掛け」、わたしは好きです。男女間だけでなく友達の女性同士で使うのも茶目っ気 があっていいでしょう。
 アウェイ(away)という単語、最近よくスポーツニュースで耳にしませんか。「遠 征地」などという意味で使われていますが、基本的に「(ここではない)どこか」と いうこと。
 play with は単純に「〜と遊ぶ」ですが、この場合は恋の相手に対して don't〜と 言っているわけだから「軽い気持ちで付き合わないで」ということですね。その一文 に続くset free は「解放する、自由にする」という使用p度の高い熟語です。set は「髪を/時計を/セットする」など日本語で普通に使われていますが、英語表現とな ると意外と応用できないもの。日常的に使える言い回しがいくつかあり覚えておくと 便利です。I'm all set!(私は準備万端よ!)とか、set a date(日取りを決める) 、set a dog(犬を放つ)など。
 ここで You can〜と言っているのには理由があります。can というは「〜できる」 という助詞としてお馴染みですが、時に(二人称を主語として)皮肉めいた感情を伴 って使う場合があるの。You can do me a favor!(お願い聞いてくれても良さそうな もんじゃない!)とか、ね。
 ask は「尋ねる」という意味で覚えていると思うけど、同じように「頼む、依頼す る、求める」という望んでいる気持ちを表わすのです。
 でもって、結局この歌では「彼の気持ち≦彼女の気持ち」って状態みたいですね。 そういうジリジリした気持ちも、度を越さなければ「恋愛の一部」として受け入れら れるんですけどねぇ……

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