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文/堀本真理美

【SWAN DIVE / Even If I Wanted To】
SWAN DIVE (収録アルバム:You're Beautiful)(c)1997 SME Inc.
ジャケット写真=US版デザイン

 幼なじみのMちゃんには、高校生の時から四、五年付き合っていたS君という彼がいました。当時この二人を知る誰もがベストカップル認め、別の大学に進んだけれどきっといつか結婚するのだと思っていました。ところが、別れの時は案外あっけなくやってきたのでした。あるときからゆっくりと歯車は狂い出して、もう以前のように同じ時を刻むことができなくなった二人は、修復を試みるもそのかいなく、お互いにとても傷ついて別れました。
 久しぶりに会って昔話をすると、Mちゃんも「あの時は、おぼろげながら私もそうなる(結婚する)んじゃないかなぁ、と思っていたんだよね…何の疑いもなく」と思い返します。けれど、彼女はこうも言うのです。
「幸せだったけれど、未だに別れの時を思うと、どうやっても『昔のことだから…』というようには振る舞えない」と。
 二人はすでにそれぞれの家庭を持っていますが、少なくともMちゃんの心にはこの曲の歌詞にあるように「消し去れない跡」が残っているのだと思います。たとえ深く傷ついた二人であっても、一生懸命に人を好きになった気持ちは心の糧になって、Mちゃんのいまの幸せが育ったのだと思います。
 さてさて、スワン・ダイヴは米国テネシー州はナッシュヴィル出身の男女のデュオです。以前、CosmosLabでアルバムを紹介したことがありましたが、この曲は男性ヴォーカルのビル・ディメインが歌っている曲のひとつです。要は、失恋の気持ちなんだけれど、曲調はあくまで明るく湿っぽさは感じられません。別れの傷は消えないけれど受け入れられるようになった、という感じかな。たしかに別れは悲しいものだけど、サッパリ忘れ去られてしまうような恋人よりずっとマシなんじゃないかな。癒えた傷跡をそっと撫でるような時があるとしたら、それはそれで素敵なことなんじゃないかって気がします。

(以下、歌詞抜粋)

You left your fingerprints on me
(ぼくには君の指紋が残ってる)
and these are the kind of marks that don't come clean
(これって取り除けるようなしるしじゃないんだよ)
So I shouldn't kid myself by saying,
(だから自分の都合のいいように考えるのはやめよう、)
there'll be some last goodbye
(最後のサヨナラがあるなんて言って...)

Even If I wanted to I could not get rid of you
(どんなに望んだって君を追いやるなんてできっこないさ)
there's no escape from what I feel inside my heart
(ぼくの心の想いからは逃げられない)
Even If I chained you up,
(たとえぼくが君を鎖に繋いで)
lowered you down in a sea of love untrue,
(不実な愛の海に降ろしたとしても)
I couldn't let go even If I wanted to
(どうしたってぼくは諦められないんだ)

 最初からいきなり印象的な詞使いです。明るいメロディにサラッと聞き流してしまいそうになるけど、fingerprints=指紋……。恋人の指紋が消えることなく身体に残っている様子、ちょっと想像してみて下さい。けっこう重いですよね(笑)
 kid は、子供・若者という意味の名詞として馴染みがあると思いますが、ここでは自動詞として使われているんです。kid oneself というのは熟語で「甘い考えを持つ/現実を甘く見る/自分自身を正当化する」というような意味があります。ほかに、「冗談を言う/からかう」の意味で「Are you kidding?/Stop kidding!(冗談でしょう?/からかうのは止めてよ!)」のような使い方も。
 by saying のような「by 〜ing(〜することによって)」は、「〜」にいろんな動詞を入れ替えて使える簡単で有効な表現方法なのでぜひ覚えて下さいね。
 even if〜は、「たとえ〜としても」というお決まりの仮定表現。〜以降の文に動詞の過去形が使われる時は、かなりありそうもない事柄の場合で、現在形の場合はもう少し可能性が高い場合だというのも覚えておくといいですね。
 get rid of というのはとても良く使う言い回しで「〜を取り除く/一掃する/追い払う/始末する」というように訳します。
 lower〜down という表現の lower は、ロー・ギアとかロー・コストとかっていうlow(低い)の動詞型ですね。ちなみに、L が R になると「row(列)」という単語。L と R の発音は日本人には難しいようですが、使い分けのポイントは R のときは口を「ウ」の形にしつつ発音すること。お試しあれ!

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