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文/堀本真理美

【ELLIOTT SMITH / I better be quiet now】
elliottsmith (収録アルバム:FIGURE 8)(c)2000 Dreamworks Records

 このところ悲惨なニュースばかりが耳に入ってきます。そして、その事態が事態だけに「それはさておきパーッと行こう!」という風にもいかず……そんな気分を落ち着かせるのにはスローな曲がいいですね。
 というわけで今回選んだのは、エリオット・スミスのナンバー。彼のファルセットや独特の呟くような歌声、美しいハーモニー……、優しいアコースティック・サウンドにしばし目を閉じて聴き入ってしまいます。このアルバムには16曲もの作品が収められており、どれもよい曲です。ビートルズが好きな人にもお勧め。急に一人でドライブに出掛けたくなったり、ふいに予定が空いてしまった休日に一人でゆったり聴くのも良さそう。
 ある文学者によれば、一人でいるときに相手のことを思い浮かべ始めたら、それは恋の始まりなのだそうです。たしかに、広い意味においてそれは恋だと認めざるをえないでしょう。さらに、ある場面を想定して相手の言動をあれこれ空想するなら、あなたは完全に恋に落ちています。
 けれど、その恋が上手くいくかどうかはあなた次第です。とても強く想いを寄せれば、その「気」が相手にも伝わりこちらに関心を向けることができるという人もいますが、そう簡単ではないでしょう。もしそれが本当なら、「あなたを好きです」と「わたしを好きになって」は、どちらの気持ちを強く持つべきなんでしょうね?
(以下、歌詞抜粋)

Wish you gave me a number
(電話番号を教えてくれれば良かったのに)
Wish I could call you today,
(今日電話できたらいいのに)
just to hear a voice
(ちょっと声を聞きたいだけなのに)
I got a long way to go, getting further away
(長い道のりだな、ずっと遠ざかっていく)

If I didn't know the difference,
(もし僕が違いを感じないとしたら)
living alone would probably be ok
(たぶんひとりでも生きていけるかな)
It wouldn't be lonely
(寂しくはないよ)
I got a long way to go, getting further away
(長い道のりを行かなきゃ、遥か向こうに)
A lot of hours to occupy it was easy
(たっぷりある勤務時間も楽勝だったさ)
when I didn't know you yet,
(君を知らなかった頃はね)
things I'd have to forget
(忘れなくちゃいけないことさ)

But I better be quiet now,
(でも今は黙っていたほうがいいよね)
I'm tired of wasting my breath
(僕の気をすり減らすのに嫌気がさしてるんだよ)
carrying on, getting upset
(続けていくのも、動揺するのもうんざりなんだ)

 さあ、一節目からよく使う表現が出てきましたね。I が省略されていますが「wish主語+動詞の過去形」で表わす仮定法です。I wish you were here(あなたがここにいてくれたらいいのに)って思われたいですねぇ。
 long way というのは文字通り「長い道(=遠い)」という意味で、I have to golong way も同意ですが、long way to go のほうが自然な口語でしょう。遠さを強調したいときに「It's long way away(すっごく遠い)」なんて言い方も出来ます。
 二節目の「If I didn't〜」と「would be〜」は、現実とは異なる事実について述べるときの仮定と推量ですね。
 probably は「おそらく/たぶん/たいてい」の意味ですが、皆さんがもっとよく使うのは耳馴染みのよい maybe ではないですか? でもこちらの〈たぶん〉 は、不確実性が高いと覚えていて下さいね。つまり、誘われたパーティにすごく行きたいけど仕事があって行けないかも、という場合には probablyを、誘われたけどそんなに行きたくないパーティには maybe を使って答えると、はっきり言わなくても相手にもニュアンスが伝わるのです(笑)
 hours は、時間の複数形になることで「勤務時間/労働時間」を表わすことができます。occupy は「〜を占める/に居住する/をふさぐ/の時間を取る」といった意味で、やや堅い表現、飛行機のトイレ使用中のサイン「occupied」でお馴染みでしょうか。
 upset も名詞、形容詞、動詞として活用できるぜひ覚えてほしい単語です。Don'tbe so upset.(そんなに取り乱さないで)、I have an upset stomach.(おなかの調子が悪いの/胃のむかつきがある)、というように使います。
 恋愛関係に限ったことではないけれど、今まで道端ですれ違うだけだった赤の他人同士、あるいはこの地球上で交わることないはずのなかった点と点が、様々なきっかけでお互いの心の中に大なり小なり居場所を持つのだから、人を好きになるときって不思議ですね。

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